天才泡盛王子・マッキー
泡盛とデザイン[011]
泡盛業界には、「王子」が二人います。
こんにちは!泡盛の現場の近くから、しんがお届けします。
世界には王子不足の界隈も多いと聞きますが、泡盛業界においては「王子」と呼ばれている存在が、私の知る限り二人います。
一人は案内人。会員制泡盛専門BAR店主の仙波晃氏。
そしてもう一人は、前回ご紹介した造り手。比嘉酒造の研究員・中村真紀(まさき)さんです。
ご両人とも不惑を迎え、王子と呼ばれる機会は減ったようですが、“泡盛の女王”は年々増えていく一方で、“泡盛王子”と呼ばれる存在はその後現れていません。お二人も特に“泡盛王”に成り上がるわけではないので(笑)、私の中では引き続きこのお二人が泡盛王子です。
さて、前回のニュースレターで「コーヒー泡盛商品の開発者」としてご紹介した中村王子。通称:マッキー。 これ以外にも多くの商品開発歴や、数々の受賞歴を持つ天才的な造り手さんです。今回は、その人となりをじっくり掘らせてもらいます。これから泡盛ファンとして育っていく皆さんにとって、マッキーの存在は楽しみをちょっと増してくれます。
【マッキーが泡盛道に入るまで】
ちなみにマッキーに、この王子話を振ったところ「自分の知らないところで呼ばれてただけなのに、仙波さんが名乗り始めたから“クーデターに遭った人”みたいになった」とのこと。(笑)
さて、そんなマッキーの職歴の始まりはアパレルショップでした。前職は、那覇のオシャレストリート・浮島通りの服屋さんだったそうです。
ただし、お酒の下地はバッチリありました。もともとお酒は大好き。若かりし頃からお父さんと日本酒や泡盛の香味について語り合っていたそうで、「泡盛は沖縄の大切なお酒だ」という感覚も早くから持っていました。
転機は、蘭。当時ブームだった蘭の品種改良に興味を持ち、生物工学を学びに専門学校へ入りました。ところがいざ授業が始まると、マッキーの心を捕えたのは「発酵学」でした。
大好きだったお酒に関連するジャンルだったこともあり、「めちゃくちゃ真剣に学んだ」そうです。卒業する頃には、蘭への興味はすっかり萎んでいたとのこと。
残ったのは「沖縄に関係する仕事に就きたい!」という漠然とした思い。イルカの飼育など、さまざまな就職先を見て回り、その中のひとつが泡盛酒造所でした。
「酒造所からはやたらとお酒に詳しいことが評価されて、強引に今すぐ出社してくれと言われました」(マッキー)
何とか卒業後の4月まで待ってもらい、無事入社。マッキーの泡盛の道は、こうしてスタートを切りました。
【すごい肩書きがいっぱい】
泡盛業界に飛び込むと、まさに水を得た魚。八面六臂の猛進撃が始まります。
2007年、泡盛マイスターを取得。 2013年、泡盛マイスター技能競技大会で優勝。内閣総理大臣賞を受賞。 2018年、泡盛シニアマイスター取得。
泡盛マイスターというのは、ワインでいうソムリエのような存在。銘柄ごとの味の違いや歴史、料理との相性、テイスティング、製造方法まで知り尽くした、泡盛の総合アドバイザーです。そして、その上位資格がシニアマイスター。マイスターの認証取得から5年以上が経ち、なおかつ各種コンテストでの受賞歴がある人しか、そもそも対象になりません。
マッキーは、泡盛メーカー勤務者で初めてこのシニアマイスターに認定されました。
職種としての現在の肩書きは、比嘉酒造の研究員兼マーケティング担当。いわゆる杜氏さん的なお仕事というより、商品開発や商品設計、ブランディング、マーケティングまでを包括的に手がける人です。
【手がけてきたもの】
◾️久米仙酒造時代
マッキーの実績は、会社を移りながら積み上がってきました。
前回のレターで取り上げた「泡盛コーヒー」の開発は、久米仙酒造時代のお仕事。
沖縄には「久米仙」の名が付く泡盛蔵が2つあり、ひとつは久米島にある大手蔵「久米島の久米仙」。そしてもうひとつは那覇にある「久米仙酒造」。マッキーは後者の久米仙酒造にお勤めでした。
泡盛珈琲の他にも発酵飲料「美王(BIO)」の開発に携わり、那覇市長賞を受賞。 さらに、(会社に内緒で勝手に熟成させていた)古酒を泡盛鑑評会に出品して、沖縄国税事務所長賞を受賞しました。
ちなみに泡盛鑑評会というのは、沖縄が本土復帰した1972年に始まった、沖縄国税事務所と沖縄県の共催による審査会。歴史の長さでも、審査員の造詣の深さでも、泡盛業界で最も権威があると言われています。
マッキーの名が泡盛ファンの間に一気に轟いたのが、樽貯蔵ブレンド酒「G.E.M」。もともと「奴樽蔵」「沖縄」などの人気樽貯蔵酒を持っていた久米仙酒造から突如リリースされたオールドアメリカンイメージのブレンド酒に業界が沸き立ち、私の記憶ではあちこちで争奪戦が起こっていたほどでした。
実際、私を泡盛コレクターだと知った沖縄県外の某泡盛BARマスターから「G.E.M持ってない?」と買い取りオファーを受けたこともありました。(売りませんでした)
ちなみに、私がマッキーと出会ったのもこの頃。私がやっていた泡盛ラジオ番組のインタビューがきっかけでした。
◾️比嘉酒造時代
「久米仙に優秀なブレンダーがいる。泡盛シニアマイスターらしい。ついでに王子らしい。」業界を騒然とさせたマッキーは、2018年に泡盛業界の巨人・比嘉酒造へ移籍します。比嘉酒造は、泡盛に詳しくない人でも名前を聞いたことがあるであろう銘柄「残波」を造る蔵。質の良い古酒を大量に保有する蔵への移籍は、マッキーのブレンダーとしての実績をさらに飛躍させることになります。
移籍以降、泡盛鑑評会に出す出品酒のブレンドを担当。移籍したその年から2023年まで6年連続受賞、さらに2025年にも受賞しています。そのうち4回が最高賞である「県知事賞」に輝いています。
そして今年。銘柄を伏せて味だけで競う世界最大級の市販日本酒の品評会である、SAKE COMPETITION 2026 泡盛部門にて「ZANPA TORAKICHI 2022」が古酒の部の1位と、泡盛部門の総合1位を獲得。
純粋に美味しさだけで、出品された全泡盛の頂点に立ちました。
賞を量産するブレンダー。こうして並べてみるとマッキーの凄さがよくわかります。
【泡盛に馴染みのない人へ、マッキーから】
そんなマッキーが造り手としての軸に据えているのは、泡盛文化の価値を最大化し、次世代へ継承すること。
「大きな事を言っているようですが、今の仕事の全ての根幹はそこにあります。約600年続く泡盛文化を僕たちの代でより良くして、次世代に繋げることが使命だと思っています」
ホスピタリティ業であり、技術者であり、伝統文化の担い手でもある泡盛の造り手さんたち。毎日飲んで美味しい泡盛も、特別な日の特別な泡盛も、そして歴史や人々の思いを乗せた泡盛も、その全てを大切にし、日々汗を流してくれている、我々泡盛ファンにとってウートートー(手を合わせて拝むときに呟く沖縄の言葉)したくなる存在です。
しん「では、泡盛にあまり馴染みがない読者さんに飲み方のアドバイスはありますか?」
マッキー「泡盛をあまり飲んだことがない方は、まずは残波ホワイト(通称ザンシロ)を買ってみてください。夏なのでグラスに氷をたくさん入れて、ソーダ割りで!または、ジャスミンティーで割って飲んでみてください」
泡盛ファンにとってはドテッパンの銘柄と飲み方。改めて天才の口から聞くと、なんだか嬉しくなりますね。(笑)
マッキー「色々と商品開発もしているので、楽しみにしていてくださいね!」
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【今回言いたかったこと】
比嘉酒造には、中村真紀という天才がいる。
さて次回の泡盛とデザイン。私事で僭越ながら、配信日がちょうど私の誕生日なんです。というわけで、超独断と偏見による「誕生日に相応しい泡盛銘柄」をリストアップしてみようかと思います。ケーキに合うやつかな?
お楽しみに!またまじゅんぬまや〜♪(また一緒に飲みましょうね)
しん
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おまけ【知ってても全く味に影響しない泡盛豆知識】
比嘉酒造のスタッフさんに「残波のホワイトとブラックは何が違うんですか?」と質問すると、皆さん工夫を凝らしたユニークなデタラメを教えてくれる。





今度泡盛マイスターの試験を受けるので、興味深く読ませて頂きました。
私も泡盛好きを増やせるように、地道に活動していきます✨